抄録
シロイヌナズナ地下部においてはPMQa-SNAREは高度な組織特異的発現性を示す。我々は、これまでの研究で、このうちSYP132が恒常的に全細胞で発現する一方、SYP123は根毛細胞に特異的に発現しており、かつ根毛を形成する細胞膜領域に集中的に局在することを明らかにした。今回、小胞輸送阻害剤を用いて行ったライブイメージングの結果、この2つのQa-SNAREは根毛細胞においてそれぞれ異なる細胞内局在性制御を受けていることが示唆された。また、これらのQa-SNAREがそれぞれ異なる複数の小胞輸送経路に関与しているかについて解明するため、Qa-SNAREと複合体を形成するR-SNAREの同定を試みた。この結果、in vitroにおけるSNARE複合体の形成に関する解析およびSplit Luciferase complementation解析により、相互作用を示唆させるQa-およびR-SNAREの候補が絞り込まれた。これらのR-SNAREの蛍光タンパク質融合体もまた発現組織特異性とともに細胞内で特有の局在を示すことから、先端成長が顕著な根毛細胞における、エンドサイトーシスおよびエキソサイトーシスの高度な制御からなる複雑な小胞輸送メカニズムが存在することが明らかとなった。