抄録
植物のクラスリン小胞輸送は、トランスゴルジ網 (TGN) から細胞膜 (PM) や細胞外にタンパク質を輸送させる経路、TGNから各種細胞内オルガネラへタンパク質を輸送させる経路、さらにPMからエンドソーム (ENDO) へタンパク質を輸送するエンドサイトーシス経路の三つの経路を有し、植物の生長、分化や環境応答と密接に関わっている。これまで、高等動物におけるクラスリン被覆小胞の輸送形態との類似性により、植物におけるクラスリン小胞輸送経路について論じられて来たが、植物のクラスリン小胞輸送の動的な細胞内挙動の詳細については不明が多い。本研究では、クラスリン蛍光タンパク質を用いて、植物におけるクラスリンの細胞内挙動を解析した。その結果、クラスリンタンパク質は主として、TGNおよびPMに局在した。またFM4-64を用いて、クラスリン小胞のエンドサイトーシスを追跡した結果、クラスリンは、PMから細胞内に移動し、ENDOへ輸送されることが示唆され、クラスリンは、ENDOマーカーであるAra7と共局在した。アクチン緑色蛍光タンパク質を発現するシロイヌナズナに、クラスリン赤色蛍光タンパク質を一過的に発現させた結果、クラスリン小胞はアクチン繊維に沿って移動することが示された。以上から、植物のクラスリン小胞は、TGM、PMやENDOに局在し、その輸送はアクチン繊維に沿ってなされる事が示された。