抄録
生物は外部から栄養を取り込めず飢餓状態になると、自身の構成成分を分解して再利用したり、さらに分解してエネルギーに変えようとする。この自己分解を担う現象の一つにオートファジーがある。オートファジーとは細胞質の一部が生体膜で包み込まれた後、リソソームや液胞に運ばれ分解される経路であるが、オートファジーがある細胞構成成分の分解をどの程度担っていて、その分解が選択的かどうかに関してはまだ充分に理解されていない。タバコ培養細胞をショ糖飢餓条件下におくとタンパク質と膜リン脂質が分解される。そのうち、タンパク質分解にはオートファジーが寄与するが、膜リン脂質分解にはオートファジーはほとんど寄与しないことが明らかになっている。本研究では、リボソームが飢餓時の栄養源として用いられる可能性を考え、ショ糖飢餓条件下でのrRNA量の変動を調べた。ショ糖飢餓処理に伴いrRNAは正味の分解を受け、この分解はオートファジー阻害剤3-methyladenineで約50%阻害された。一方で、形態学的観察は3-methyladenineが同条件下で起こるオートファジーをほぼ完全に阻害することを示した。これらの結果は、オートファジーがrRNA分解に寄与していることを示すとともに、オートファジー以外のrRNA分解経路の存在を示唆していると考えられる。本発表ではデータの詳細を報告し、rRNA分解の経路を考察する。