抄録
亜鉛は多くの酵素の活性中心などに存在し、あらゆる生物にとって必須微量元素である。一方、過剰量では障害をもたらす元素でもあり、例えば植物ではクロロシスを誘導する。亜鉛ホメオスタシスは多数の因子で維持されているが、とくに亜鉛の膜輸送に注目している。シロイヌナズナでは12種類存在するMTP(metal tolerance protein)ファミリーのうち、MTP1及びMTP3が液胞膜に存在し、過剰亜鉛の液胞への隔離機能を担っていることが知られている。本研究では、これらと約46%の配列同一性をもつMTP4に注目し、GFPタグ法と細胞分画法によって、この分子が細胞膜に存在することを明らかにした。酵母の機能相補実験では、亜鉛感受性酵母zrc1cot1に対してMTP4導入株は亜鉛耐性を示した。MTP4プロモーター-GUS株では、成熟した花粉に多く発現していたほか、葉、茎、根の維管束組織にも発現していた。pMTP4::MTP4-GFP株の解析では花粉管にもMTP4は存在していたが、T-DNA挿入破壊株は稔性を示し花粉管伸長も正常であった。MTP1との構造類似性も考慮すると、MTP4は細胞膜上で、H+勾配を利用して亜鉛を細胞外へ排出する輸送を分担していると予想される。他の亜鉛輸送体との関連も含めて、生理機能を議論したい。