抄録
植物において、ZIP(Zrt-/ Irt-like proteins)トランスポーターは亜鉛、鉄、マンガン、銅などの必須重金属元素の取り込みに極めて重要である一方、有害重金属を誤って輸送しうるために植物の有害重金属の蓄積の原因ともなる。しかし、この問題に起因するZIPファミリーの基質特異性に関する構造学的な知見は、いまだ乏しい。昨年度の本学会年会において発表者はThlaspi japonicum(Brassicaceae)から単離されたZIPトランスポーターTjZNT2のN末端領域(36 a.a.)を欠損させると亜鉛輸送能が付与されることを発見し、ZIPトランスポーターのN末端領域の基質特異性への関与が示唆されたことを報告した。本発表では、このN末端領域の機能の検討を行なったので報告する。N末端長の異なる3種類の変異TjZnt2を構築し、Zn65の輸送活性を調べたところ、亜鉛輸送能の阻害率はN末端長にほぼ比例した。また、出芽酵母の各種遺伝子欠損株をもちいてマンガン、銅、鉄の輸送能を検討したところ、N末端の欠損によりマンガン輸送能が消失し、他金属種への特異性にも影響していることが明らかとなった。現在、植物体におけるTjZNT2の機能の解析を行っている。