抄録
我々はカドミウム(Cd)超集積植物Thlaspi caerulescens (ecotype, Ganges)が高濃度のCdを液胞に局在させ、無毒化することを明らかにしているが、それを担う輸送体は未だ明らかにされていない。本研究ではまず、Cdを液胞へ輸送する膜タンパク質をコードする遺伝子を探索するため、ArabidopsisのGenechipを用いて、Cd非集積性のエコタイプPrayonに対してGangesで高発現している遺伝子を網羅的に解析した。そのうち、Gangesで高発現し、P-type ATPaseに属するHMA3に着目してその機能解析を行った。GangesとPrayonからそれぞれTcHMA3の全長を得、配列を比較したところ、アミノ酸レベルで99%の高い相同性が認められた。酵母発現系において、両エコタイプ由来のHMA3は共にCdを輸送する活性が見られたが、亜鉛(Zn)に対する活性は見られなかった。またTcHMA3の発現は根と地上部の両方で見られ、高濃度Zn及びCd処理による影響を受けなかったが、Gangesの方がPrayonより常に約4倍高く発現していた。TcHMA3:GFP融合タンパクの発現及びウェスタン解析の結果、HMA3が液胞膜に局在していることが観察された。これらの結果は、GangesにおいてTcHMA3がCdの液胞への輸送に関与していることを示唆している。