抄録
環境応答におけるシグナル伝達にはタンパク質のリン酸化、脱リン酸化が重要な役割を担っている。シロイヌナズナにおいては、タンパク質脱リン酸化酵素タイプ2C(PP2C)であるABI1、ABI2、HAB1、AtPP2CA/AHG3がABAシグナル伝達に関与することが報告されている。我々は酵母のPP2CであるPTC、ヒトのPP2CであるPPM1Gと高い相同性を持つAPC4と名付けたシロイヌナズナのPP2Cに着目し、機能解析を行っている。PTCとPPM1Gは共にストレス応答性のシグナル伝達経路に関与することが報告されており、相同性の高いAPC4遺伝子もシグナル伝達への関与が期待される。これまでに我々はAPC4のPP2C活性を確認しており、次に生体内での機能を明らかにする目的でT-DNAタグラインよりスクリーニングを行い、異なる挿入位置を持つT-DNA挿入変異ラインを2系統単離した。前回の年会では、APC4のより内側にT-DNAが挿入した系統ではホモ個体が得られず、へテロ個体の自家受粉集団においては遺伝子型の異常な分離比を示していることを報告した。現在、APC4の過剰発現などの形質転換体を作製しており、これら変異体と野生型を様々なストレス条件下で生育させることで、表現型の差異からAPC4の機能解析を目指している。