抄録
COP9シグナロソーム (CSN)は8つのサブユニットからなる複合体であり、核内で情報伝達を制御する。この制御機構を解明するためにCSN1サブユニットの機能に着目して解析をすすめている。CSN1のN末端領域 (CSN1N)は、動物で転写抑制能を示し、植物では生存に不可欠である。この分子機構を明らかにするためにCSN1Nと相互作用する因子群を、シロイヌナズナのcDNAライブラリからYeast Two-Hybrid法を用いて単離した。
その結果、結合候補因子として転写因子を新たに2つ同定し、そのひとつは3つのヘリックスが2つのループによって繋がれた、新規の構造保存領域を含んでいると予測された。この保存領域をもつ転写因子群はシロイヌナズナにおいてファミリーを形成し、さらに、イネ、ブドウ、タバコ、ヒメツリガネゴケと広く存在した。また、この転写因子は動物にはないことから、植物界全体で用いられている転写因子の一種と考えられた。そこで、シロイヌナズナより単離した、この新規の保存領域を保有する転写因子と最も保存性の高い転写因子2つについて、in vitro でCSN1Nとpull-downを行なったところ、3つの転写因子全てがCSN1Nと特異的に結合した。今回、この3つの転写因子それぞれの機能と、これら転写因子とCSN1の相互作用が担う役割について議論する。