抄録
糸状性のシアノバクテリアAnabaena (Nostoc) sp. PCC 7120 は、窒素飢餓状態で培養するとヘテロシストと呼ばれる窒素固定能をもった特別な細胞を形成する。私たちは、光合成生物において様々な酵素蛋白質に還元力を供給し、生理的に重要な機能を担っているチオレドキシン(Trx)が、どのような蛋白質と相互作用するのかを網羅的に解析しており、本研究では、Anabaenaの栄養細胞とヘテロシスト細胞のTrx標的蛋白質の解析を行った。昨年報告したように、Anabaena のTrxA(alr0052) の酸化還元調節に関与するCysの一方を変異した変異型TrxAを作成して樹脂に固定し、Anabaenaの可溶性蛋白質と反応させ、捕捉された標的蛋白質候補をPMF解析した。昨年報告した栄養細胞の標的蛋白質候補43種類については、MASCOT peptide mass fingerprint search engine (Matrix Science)の精度を上げて解析し直し、38種類に絞り込んだ。単離したヘテロシストの可溶性蛋白質について同様の解析を行った結果、ニトロゲナーゼを含む数種類のヘテロシスト特有の蛋白質を同定することができた。