抄録
細胞質型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(cAPX)は、光酸化ストレス応答時の細胞内レドックス調節役として重要な役割を担っている。本研究では、シロイヌナズナcAPX(cAPX1)過剰発現体(cAPX-OE)とcAPX1破壊株(cAPX-KO)を用い、APX発現レベルの差異が光酸化ストレス応答時の細胞内H2O2レベルに対しどのような影響を及ぼすのか検討した。シロイヌナズナAPX1cDNAをpBI121ベクターに導入し、シロイヌナズナに形質転換した。得られた7株の形質転換体は、野性株と比較して約3~6倍のAPX活性を示した。一方、cAPX-KOでは野生株の約30%のAPX活性を示した。定常条件下(100 μmol m-2 s-1, 16h/8h明暗)における野生株、cAPX-OEおよびcAPX-KOの表現型に有意な違いは観察されなかった。強光ストレス(1,000 μmol m-2 s-1)条件下における光化学系II最大量子収率(Fv/Fm)を調べた結果、野生株とcAPX-OE間では顕著な違いは認められなかったが、cAPX-KOでは有意に低下していた。野生株およびcAPX-KOでは、強光照射1時間後に葉中H2O2レベルの上昇が認められるが、cAPX-OEではこの上昇が有意に抑制されていた。現在、強光ストレス応答時の各株における発現応答遺伝子について解析を進めている。