抄録
アクティベーション・タグラインを用いた耐凍性関与遺伝子の検索により見つけたAtFIB5は、スプライシングの違いにより、273と259個のアミノ酸をコードする2つのmRNAが発現すると考えられる。室温ではFIB273が主に発現しているが、低温馴化するとFIB259の発現がFIB273と同等レベルまで上昇した。これら2つの遺伝子の機能を明らかにするために、AtFIB5過剰発現体とノックアウト植物体(fib5)を用いてこの遺伝子の耐凍性への関与を検討した。
fib5植物体は矮性で成長が遅く、光合成色素量が低下していた。イオン漏出による耐凍性評価でも著しく耐凍性が低下していることが明らかになった。この植物体にFIB273を導入すると、成長速度や耐凍性が野生型と同程度まで回復し、相補されていることが分かった。fib5にFIB259を導入した場合、Chla/bの低下やβ-carotene量に改善が見られたものの、fib5に近い表現型を示したままであった。一方、AtFIB5を過剰発現した植物では、FIB273を導入したものよりFIB259を導入した植物体において耐凍性の向上が見られた。以上の結果より、2つのAtFIB5遺伝子の機能は異なり、FIB273は光合成機能の維持等に重要な働きをしており、FIB259は耐凍性を向上させる働きを持つことが示唆された。