抄録
植物体の養分吸収において、無機イオンの水耕液中から根への移行、根から地上部への移行をリアルタイムで定量的にイメージングできる装置を開発した。水耕液中におけるイオン動態に始まり、根から地上部へのイオン移行について、暗環境の根から明環境下での地上部まで連続的なイオン動態の可視化に初めて成功した。RIを用いるイメージングである為、光強度とは無関係にイメージングが可能であり、また画像の定量的な解析もできた。本装置はベータ線を放出するほとんどのRIを利用できるが、本発表ではミヤコグサを用い、32P標識リン酸を用いたリアルタイムRIイメージングを紹介する。32Pリン酸(500kBq/ml)を水耕液に添加し、播種後2週間目のミヤコグサに根から供給した。イメージングは3分間を1フレームとし40-60時間後まで測定した。地上部のみ十分な光強度が確保できるよう、LED (白色DC4.5V/20mA) 100個を取り付けた。試料から放出される放射線はCsIシンチレータを蒸着したプレートで光に変換され、CCDカメラに取り込まれた。水耕液および植物地上部から暗所での根のリン酸吸収速度はほぼ一定であるものの、地上部、特に葉へのリン酸の移行量は昼間高く、また夜間では低くなる傾向が示された。よって、昼間における葉の多量な蓄積が開始されるにつれて、相対的に根への蓄積量は低くなる傾向が示された。