抄録
植物のリン酸栄養に対する応答機構は、近年の転写因子の単離などによりその応答経路が明らかにされてきているものの、未解明な点も多く残っている。リン酸は体内での移行性が高い元素であることから、植物組織内のリン酸移行分布や濃度変化を詳細に理解することが重要だと考えた。そこで植物のリン酸環境の応答機構の解明を目的に、さまざまなリン酸環境下でのリン酸動態のイメージングを試みた。
今回、マメ科モデル植物であるミヤコグサを対象に吸収と移行の主な形態であるPO43-の放射性同位体標識トレーサーを用いてリン酸環境(水耕液リン酸濃度、欠乏処理期間)、光条件、生育ステージの違いにより体内のリン酸吸収移行がどのように変化するのかを調べた。リン酸のイメージングには当研究室で開発・改良したリアルタイムRIイメージングシステムで根から地上部までの解析を行った。その結果、新葉、古い葉への分布の違いや子実期の葉からの転流について、コントロール植物とリン酸欠乏処理を行った植物体とで吸収移行速度、組織への分配割合の違いが確認された。また、リン酸移行の違う組織間でミヤコグサリン酸トランスポーターの発現量が違っていた。以上のことから植物体組織ごとのリン酸環境変化を理解し、それに基づいた解析がリン酸応答機構の解明に重要であると考えられた。