抄録
本研究は、イネ(日本晴)と中国の東北部で生育しているイネ科のアルカリ塩耐性野生植物Chloris virgata Swartz(中国名:虎尾草 以下C.virgata)のMetallothionein 1(MT1)遺伝子について植物体内における機能とその働きを明らかにすることを目的として行った。MTとは、動物、植物、原核生物などで同定されていて、保存性が高く、発現量の多い4.5~8.5kDa程度の小さなタンパク質である。MTはシステインリッチなタンパク質であり、金属をバインドすることにより重金属耐性にかかわるだけでなく、ROSの除去にも関係していることが分かってきているが、植物体における機能などはまだ明らかになっていないことも多い。
まず、イネ、C.virgataについて重金属存在下におけるMTの発現解析を行った。その結果、ChlMT1aは重金属に応答して発現が誘導されるのに対し、イネのOsMT1a、OsMT1bは発現の誘導は見られなかった。
次に、植物体内における機能を予想するために、それぞれのMT1を導入した形質転換酵母を作出し耐性比較を行った。その結果、植物MTは酵母体内において機能し、金属耐性などを向上させることが分かった。
また、現在それぞれのMT1を導入した形質転換体シロイヌナズナを作出し、ストレス耐性等の表現型耐性についての評価を行っている。