抄録
国内の鉱山跡地に自生する植物から新規なカドミウム耐性遺伝子を単離し、その耐性機構を解析することを目的とした。このために、尾去沢鉱山跡地に自生していたメヒシバとブタナの新生根由来のcDNAライブラリーを作成し、カドミウム感受性酵母(Δycf1)を宿主としたスクリーニングを行った。得られた33個のCd耐性遺伝子のうち、メヒシバから単離したDcCDT1(Digitaria ciliarisCd-tolerant 1)についてより詳細な解析を行った。本cDNAは、55個のアミノ酸からなるペプチドをコードしていたが、このうち15残基はシステインであった。DcCDT1相同遺伝子は植物特異的であり、イネには5個(OsCDT1-5)、シロイヌナズナには1個が見つかった。OsCDT1-5の地上部の発現は、Cd処理によって誘導された。またGFP融合法により、遺伝子産物は細胞膜そして細胞壁に存在することを示した。DcCDT1そしてOsCDT1を過剰発現した酵母及びシロイヌナズナ植物は、カドミウム処理をした際、対照に比べ細胞内カドムウム含量が低下していることから、細胞内へのカドミウムの流入を阻害することで、宿主細胞にカドミウム耐性を与えているものと考察した。さらに、ブタナから単離した新規カドミウム耐性遺伝子についても現在解析を行っており、その結果についても言及する。