抄録
本研究は、環境中に放出された重金属を積極的に細胞内に取り込み、植物の解毒器官の一つである液胞に蓄積できる新規重金属高蓄積性植物の作出を目的とする。細菌由来のMerCは無機水銀、カドミウムを細胞外から細胞内へ輸送するトランスポーターである。また、シロイヌナズナ由来のSNAREファミリーのAtVAM3は液胞膜に特異的に局在する一回膜貫通型の膜タンパク質である。本研究では、MerCを液胞膜へ効率的に輸送させるために、輸送制御タグとしてAtVAM3を融合したmerC-AtVAM3融合遺伝子を作成し、植物ベクターpMAT137に組換え、常法に従いシロイヌナズナに形質転換した。次に作成した遺伝子組換え植物を用いて、ゲノムPCRにより目的遺伝子のゲノムへの組換え、RT-PCRにより目的遺伝子の発現をmRNAレベルでそれぞれ確認した。さらに遺伝子組換え植物体の水銀耐性および蓄積性について検討した結果、merC-AtVAM3遺伝子組換えシロイヌナズナにおいて、水銀耐性は野生株とほぼ同程度であったが、水銀蓄積性は野生株に比べ高い傾向が認められた。以上の結果より、merC-AtVAM3遺伝子組換え植物体は、水銀耐性を低下することなく水銀高蓄積性を示し、水銀浄化に適していると考えられた。