抄録
油糧用ナタネ(Brassica napus L.)から得られる油脂は、食用油としてのみでなく、バイオディーゼルの原料としても重要である。そのため、B. napusに関する様々な研究が行われているが、元素に着目した報告は少ない。そこで、元素に着目した分析を行うことにより、B. napusの生理学的性質を明らかにすることを目的として研究を行った。実験材料として、B. napus(キザキノナタネ、キラリボシ、Westar)の種子および20℃、連続光で水耕栽培した植物個体を用いた。まず、SEM-EDS、ICP-AES、蛍光X線分析装置を用いて元素分析を行った。その結果、硫黄(S)について品種間での差が確認された。そこで硫黄に着目して更なる研究を行った。35Sで標識した硫酸を用いて植物個体での硫黄の動態を調査した。水耕液に35S標識の硫酸塩を1 MBq/20 mlとなるように調整し、播種後42日目のWestarに吸収させた。20-30時間吸収させた後、イメージングプレートを用いて植物体内の35Sの分布を調査した。次に、リアルタイムRIイメージングシステムを用いて、生きた状態での幼植物および鞘中の硫黄の動態をリアルタイムで可視化することができた。本研究は、コンポン研究所株式会社との共同研究で行っている。