抄録
雪腐病は、積雪環境を好む好冷性糸状菌(雪腐病菌と総称される)が越冬性農作物に感染し、その収量と質を低下させ、安定な生産を脅かす深刻な病害である。越冬性植物は、越冬中における雪腐病菌の感染を防ぐために低温馴化による雪腐病菌抵抗性獲得機構を持っていると考えられているが、ムギ類や牧草を中心に進められているこれまでの研究では、その詳細は明らかになっていない。そこで本研究では、モデル植物シロイヌナズナの越冬性に着目し、低温馴化による雪腐病抵抗性獲得機構を分子レベルで明らかにするためのツールとして利用することを試みた。まず、シロイヌナズナを屋外で越冬させ、春先における雪腐病様の罹病葉から2種の雪腐病菌(Typhula ishikariensis、Typhula incarnata)を同定した。これらの雪腐病菌は実験室内で再感染したことから、シロイヌナズナが雪腐病に罹病することが明らかになった。さらに、単離ロゼット葉を用いて雪腐病抵抗性検定法を確立した。この検定法を低温誘導性防御タンパク質過剰発現体の評価に応用したところ、過剰発現体では雪腐病抵抗性が増大していることを証明することができた。