抄録
我々は、イネ細胞においてCEBiPがキチンエリシターの認識とシグナル伝達に重要な受容体タンパク質であることを明らかにした1)。しかしCEBiPのノックダウン形質転換体の解析の結果から、CEBiP以外にも類似する役割を持つ分子が存在する可能性を示唆した。一方、これに関連して我々はCEBiPの精製過程にCEBiPと共精製され、かつCEBiPと高い構造的相同性を持つ微量なタンパク質(CEBiP2)を単離した。このCEBiP2の構造は、CEBiPと同様に細胞外領域にキチンオリゴ糖の結合に関与する2つのLysMモチーフ及び細胞内領域に3つのアミノ酸残基を持つ膜タンパク質であると予測された。興味深いことに、キチンエリシター処理によりCEBiP2遺伝子はCEBiPに比較して、非常に短時間(15分)一過的に発現が誘導されることが明らかになった。我々は、このCEBiP2の機能をより詳細に調べるために、この分子の過剰及びノックダウン形質転換体を作製し研究に用いた。その結果、CEBiP2がCEBiPと同様に、キチンオリゴ糖に対して結合活性を持ち、またノックダウン形質転換体細胞ラインで活性酸素の応答が非形質転換体細胞に比較して抑制された。これらの結果はCEBiP2がCEBiPと同様に受容体として機能する可能性を強く示唆した。1)Kaku et al., PNAS, 103, 11086 (’06)。