抄録
これまでに我々は、ウィルス感染により誘導されるブドウの果実品質低下の分子機構を解明することを目的とし、ウィルス感染特異的に誘導されるブドウタンパク質virus-induced grapevine protein (VIGG, accession no. EF212291)を同定した。viggは、その発現によりブドウ果実の総酸量、フラボノイド量を顕著に上昇させ、果実品質の低下と関連性を示した。viggは小胞体に局在し、ブドウ細胞に小胞体ストレスを誘起することで、その発現が誘導される(Katoh et al., 2008)。また、モデル植物のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)へviggを過剰発現させたところ、vigg形質転換シロイヌナズナは草丈が低く、根の伸長が抑制された。加えて、vigg形質転換シロイヌナズナのDNAマイクロアレイによるトランスクリプトーム解析を行った結果、小胞体ストレス応答、花成制御、リノレン酸代謝経路の関連遺伝子の発現変動が認められた。