抄録
過敏感反応(HR)とは,特異的抵抗性遺伝子をもつ植物に対応する病原体が感染した際に観察される,感染細胞の自発的細胞死と局所的及び全身的な自己防御活性化を伴う植物に特徴的な病害抵抗性反応である.HRによる細胞死に先立って,光合成活性の低下が観察されているが,葉緑体機能の細胞死と自己防御活性化における寄与については明確でない.タバコモザイクウイルス(TMV)に対する抵抗性遺伝子NをもつサムソンNNタバコ葉でTMVのN遺伝子に対応するavr因子であるP50を発現させることによってHRを誘導すると,ミトコンドリア膜電位消失に続いて光合成活性の低下が観察された.さらに,タバコMAPキナーゼであるWIPK,SIPKを強制的に活性化させる恒常活性化型MAPキナーゼキナーゼMEK2DD及びミトコンドリア機能不全を誘導する動物のアポトーシス促進遺伝子Baxの発現によって,ミトコンドリアの膜電位消失に引き続いて光合成活性の低下が観察された.明暗条件及び光合成阻害剤であるDCMU処理は,HR細胞死のタイミングに影響を与えなかったが,暗条件下ではTMVの増殖が促進された.これらの結果から,HRでは「MAPキナーゼ活性化」によって誘導される「ミトコンドリア機能不全」に引き続いて「光合成活性低下」が誘導されること及び,葉緑体機能は細胞死には不要であるがTMVの増殖抑制に関係している事が示唆された.