抄録
マメ科植物はその根において窒素固定細菌(根粒菌)と共生系を確立し、高効率の窒素固定器官である根粒を形成する。この根粒の形成には、植物由来のシグナル分子であるフラボノイドの根からの分泌や、根粒組織内での炭素源と窒素化合物の交換など様々な膜輸送系が複雑に関わっている。ATP結合カセット(ABC)タンパク質は、植物の膜輸送体の中で最大のファミリーを形成する。マメ科のモデル植物であるミヤコグサのゲノムにおいては、少なくとも90個以上のABCタンパク質遺伝子が見出されており、その物質輸送と生理機能に対する寄与に大きな興味が持たれる。本研究ではミヤコグサの根粒形成に応答するABCタンパク質に焦点を絞り、その輸送機能と生理的役割を解明することを目的とした。
我々は根粒感染時に最も顕著に発現が上昇するABCタンパク質の1つとしてLjABCB1を見出した。組織別発現解析よりLjABCB1は植物体地下部、特に根粒で最も高く発現していることが確認された。さらに詳細な発現をGUS 活性により調べたところ、LjABCB1は根粒内の根粒菌感染細胞に隣接している非感染細胞において特異的に発現していることが明らかとなった。これら根粒特異的な2種の細胞の間での物質交換に関与する輸送体と考え、生化学的解析を行っている。