日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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オゾン暴露によるイネ品種の可視障害発現と収量との関連性
*澤田 寛子河野 吉久
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p. 0999

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抄録
オゾンは作物の成長や収量を低下させる。植物の特徴的なオゾン障害は葉の褐色斑やクロロシスで,オゾン感受性を判定する指標として用いられている。しかし,可視障害が直接的にイネの収量減少に結びつくかは明確になっていない。そこで,日本あるいはアジアの主要国から収集した水稲品種にオゾンを暴露し,可視障害の発現と収量に及ぼす影響を調査することで,イネの収量低減機構と可視障害との関連性について検討した。葉の可視障害において,Indica型のKasalathが可視障害に最も抵抗性を持ち,最も感受性の高い品種はJaponica型のきらら397であった。収量については,日本産品種の多くはオゾン暴露による影響をほとんど受けなかったが,きらら397は収量に対する影響も大きく,22%の減少が見られた。一方,可視障害の発現が非常に少なかったKasalathは収量が20%低下し,可視障害の発現しやすいJothiでは収量の低下が見られなかった。以上の結果から,可視障害により評価したオゾン感受性の結果とイネの収量との間には整合性がみられず,イネの収量低下を導く慢性的なオゾン障害の発現機構は,光合成効率を低下させる葉の可視障害だけでは説明できないことが明らかとなった。本研究は,環境省地球環境研究総合推進費(Ba-086)の支援により実施された。
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© 2009 日本植物生理学会
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