抄録
シロイヌナズナのfar-red light-inducible PR1-like gene (FPL)は、遠赤色光照射で発現が誘導される遺伝子であり、pathogenesis-related protein 1 (PR-1)に類似のタンパク質をコードしている。FPLは、根特異的に発現し、シロイヌナズナのPRB1やPR-1と約60%のアミノ酸配列が一致しているが、その機能や病原菌・傷害・ホルモン等への応答の詳細は明らかになっていない。FPLと最も類似性が高いPRB1の発現がエチレンで誘導されること、遠赤色光によりエチレン合成の促進やエチレンへの感受性の増加がおきるという報告があることから、我々はまずFPLのエチレン応答について検討した。野生型及びetr1突然変異体に対する1-aminocyclopropane-1-carboxylic acid投与実験の結果、FPLがエチレンによっても誘導されることが明らかとなった。エチレンと遠赤色光シグナリングによるFPLの発現誘導機構が互いに独立したものであるか、相互作用があるのかについて、今後検討していく必要がある。