抄録
植物が過湿土壌の環境下で生育するためには、根端への酸素供給が必須であり、その酸素供給に寄与するのが通気組織である。通気組織とは、根や茎葉部の皮層組織に形成される空隙で、大気中の酸素を根端へと供給する役割を果たす。この通気組織の形成機構については未だ不明な点が多い。本研究では、低酸素条件下で通気組織形成が誘導されるトウモロコシの種子根を材料にして、通気組織形成の分子機構を明らかにすることを目的とする。
通気組織形成過程でどのような遺伝子発現の変化があるか明らかにするために、Laser Microdissection (LM)‐マイクロアレイ解析を行った。播種後3日目のトウモロコシの種子根に対して、6時間の浸水処理を行い、根の断片を固定・パラフィン包埋した。通気組織は皮層組織特異的に形成されることから、LM法を用いて根のパラフィン包埋切片より皮層組織のみを回収し、RNAを抽出した。抽出したRNAを増幅させ、トウモロコシの15 K cDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、36個の通気組織形成関連の候補遺伝子を同定した。現在、これらの候補遺伝子について経時的な遺伝子発現の変化を追うとともに、LMを用いて組織特異的な発現解析を行っている。