抄録
精製核画分及びDNAアフィニティークロマトグラフィーにより調製したタンパク質画分を用いたイネ核プロテオーム解析により、それぞれ643、399個のタンパク質を同定したことを昨年、報告した。今回、得られたイネ核プロテオームと植物データベースの活用によって新規核内情報伝達因子の同定が可能であるかを検討した。糖応答に関わる植物界で広く保存されている核内因子の同定を目標として、同定タンパク質を精査した。その結果、イネの糖センサー型ヘキソキナーゼとして最近同定されたOsHXK6が同定されていることが判明した。また、情報伝達や転写制御に関与すると見られた約170個の同定タンパク質の中から、シロイヌナズナのオルソログが特定できるか、そのオルソログの糖応答がDNAマイクロアレイのデータベース上で示されているか、という基準による選抜を行い、WD40リピートを含むタンパク質を2個、アルマジロリピートを含むタンパク質を1個、同定した。RT-PCR解析により、これらのタンパク質をコードする遺伝子の発現はイネにおいてもグルコース応答していることが、また、GFPタンパク質を用いた解析によりこれらの核局在も確認された。WD40リピートとアルマジロリピートはいずれもタンパク質間相互作用ドメインと考えられていることから、これらは糖応答において進化的に保存された役割を持つ新規情報伝達因子である可能性が示唆された。