抄録
他の植物に寄生し養分を奪って生活する寄生植物は、全被子植物種の約1%を占める。ハマウツボ科の根寄生植物ストライガ(Striga hermonthica)は、モロコシやトウモロコシ、イネなどの主要な穀物を宿主とし、アフリカ半乾燥地域を中心に甚大な農業被害をもたらしている。しかし、寄生植物の感染機構に関しては未知の点が多く、根本的な解決策は見つかっていない。ストライガは、その発芽に宿主植物から分泌されるストリゴラクトンを必要とするだけでなく、侵入・寄生器官である吸器の形成にも宿主由来のシグナルを必要とする。宿主根に侵入したストライガ吸器は宿主と自身の維管束系を連結させ宿主から養分を得て生活する。寄生成立まで一連の過程で寄生植物特異的な分子プログラムが働いていると考えられるが、ストライガ感染の分子レベルでの解析はあまり進んでいない。
我々は、ストライガの分子生物学的解析のための基盤構築をおこなっている。本発表では、1)ストライガ感染系の確立と感染過程の観察、2)ストライガ宿主特異性の解析、3)全長cDNAライブラリーの構築とEST解析によって明らかになったストライガゲノムの特性について紹介する。また、日本在来種である半寄生植物コシオガマ(Phtheirospermum japonicum)を用いた寄生植物解析の新しい試みについても紹介したい。