抄録
SPring-8のような第3世代放射光施設では,高輝度・高平行性という特徴を活かしたX線領域での集光光学素子の開発が盛んであり,試料上でのサイズは“ナノビーム”と呼ばれる領域に達している.X線顕微鏡は投影型,結像型,走査型のように大まかに分類することができ,投影型を除き集光素子を用いることで高空間分解能が実現できる.結像型の代表的な例は位相イメージングやマイクロトモグラフィーであり,その分解能は100nm程度である.ここでは主に走査型顕微鏡について述べるが,これは対物レンズとして集光素子を試料前に配置し,試料を走査する(通常はXYの2軸)ものとなっている.ここで集光X線に照射された各点からの蛍光X線を計測すれば,特定の元素の分布が得られることになる.SPring-8 BL37XU では空間分解能1μm2程度でCaより元素番号の大きなものの蛍光X線分析が可能である.また,得られた元素分布像を基にしてX線吸収スペクトルやX線回折などの測定との組み合わせも行うことができ,物質評価の観点では,強力なツールである.
講演では,走査型X線顕微鏡のポテンシャルや,物質科学,地球化学など種々の分野への応用例などについて述べる.