抄録
植物ホルモン・オーキシンは低分子量の成長制御分子である。細胞内オーキシン量の調節によって、細胞の成長、分裂、分化、ひいては個体の大きさ、発生、生殖など様々な植物の営みが制御されている。細胞内オーキシン量は、生合成・代謝調節及び細胞膜に局在するオーキシン輸送体を介した細胞内外への流出入調節によってなされているが、未だその分子機構の詳細は明らかになっていない。オーキシン量調節の仕組みを明らかにすることは、植物細胞を扱うすべての研究分野に影響を与える、植物科学研究の最重要課題の一つである。我々はオーキシンの光環境応答、特に光屈性反応におけるオーキシン代謝調節について研究を進めている。植物の三つの主要な光受容体ファミリー、フィトクロム、クリプトクロム、フォトトロピンは、それぞれ異なるシグナル伝達経路を介してオーキシン量の調節を行っている。それらの分子機構を明らかにすることによって、光環境に適応した細胞の成長・分裂・分化の制御機構解明に貢献したいと考えている。本講演では、シロイヌナズナの光屈性におけるオーキシン輸送調節、特にPIN及びABCB型オーキシン輸送体の機能解析について、使用している分子遺伝学的研究材料、抗体なども含め紹介する。本研究は、JSTさきがけによってサポートされている。