抄録
植物の主な活性型オーキシンであるインドール酢酸(IAA)の生合成経路は未だに全容が解明されていない。その理由としては、1)複数の生合成経路が存在する、2)生合成遺伝子ファミリーを形成している、3)中間体が化学的に不安定で分析が難しいなどの点が挙げられる。近年、遺伝学的アプローチによりYUCCA、CYP79B2/CYP79B3、TAA1などのIAA生合成遺伝子が単離され全容解明への糸口が見えた。しかし、これらの遺伝学的アプローチのみでは複雑に交差した従来のIAA生合成モデルを紐解くのは難しい。我々はこの問題を解決するために安定かつ迅速なIAA中間体分析法の確立を試みた。これまでのIAA中間体分析法ではGC-MSが主流であったが、我々はLC-ESI-MS/MSを導入した結果、インドールアセトアルドキシム(IAOx)などこれまで植物からの検出が困難であったIAA中間体の分析に成功した。これを基盤として数種のIAA生合成変異体を分析した結果、IAOxを含むIAA生合成経路が種特異的な経路であることが明らかになった。本講演ではオーキシン生合成研究におけるIAA中間体分析の重要性と今後の展開について述べる。