日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

亜ヒ酸の輸送と耐性に関与するアクアポリン、NIP1;1
*神谷 岳洋田中 真幸三谷 奈見季馬 建鋒前島 正義藤原 徹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. S0033

詳細
抄録
近年、アジアを中心としたヒ素(As)による土壌や水質、ひいては作物の汚染が深刻な問題となっている。作物にとってのAsは毒であり、収量低下を引き起こす。本研究では、Asの主な存在形態の一つである亜ヒ酸(As(III))の植物体内への輸送経路や耐性メカニズムを明らかにするために、シロイヌナズナのEMS処理種子を用いたスクリーニングを行った。その結果、3株のAs(III)耐性株を単離した。これらはいずれも植物のアクアグリセロポリンNIP1;1に変異を有していた。T-DNA挿入株も耐性を示した事から、原因遺伝子はNIP1;1であることが示された。Xenopus oocyteの発現系により、NIP1;1がAs(III)を輸送することを明らかにした。また、野生型株とNIP1;1破壊株のAs含量を測定したところ、野生型株に比べNIP1;1破壊株では低下していた。以上の結果から、NIP1;1が亜ヒ酸耐性の原因遺伝子であり、輸送活性の喪失によりAs(III)耐性を付与していることが示唆された。NIP1;1は根で多く発現している。また、GFPを用いた解析によりNIP1;1は細胞膜の遠心側に極性を持って局在していることを明らかにした。以上のことから、NIP1;1は根におけるAs(III)の取り込みを担う主要な分子であることが示された。一方、NIP1;1の本来の生理的な機能は現在解析中である。
著者関連情報
© 2009 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top