抄録
アブラナ科植物では、柱頭の乳頭細胞に他家花粉が受粉すると花粉は吸水し、花粉管を発芽・伸長させ、乳頭細胞に侵入し受精に至る。このような他家受粉過程においては、花粉の吸水・発芽に伴って、乳頭細胞から花粉への水やイオンの移動が起きることが明らかになっているが、その機構は明らかではない。そこで、本研究では、受粉過程における水輸送の機構を明らかにすることを目的に、シロイヌナズナを用いて、乳頭細胞から花粉への水の供給に関わる分子を探索した。初めに、Ca2+蛍光指示薬カルシウムグリーンを用いて、アクアポリン阻害剤であるHgCl2が花粉の吸水に影響するかどうかを調べた。その結果、HgCl2の濃度依存的に花粉の吸水が阻害された。さらに同様のアッセイにより花粉表層物質(PC)単独でも乳頭細胞からPCへの水の移動が確認され、この移動がHgCl2感受性であることも明らかになった。シロイヌナズナには35種類のアクアポリンが存在することが知られている。本研究では、特に細胞膜型PIP2ファミリーに着目し、柱頭乳頭細胞での発現をリアルタイムPCR、in situハイブリダイゼーションなどにより解析した。さらにGFP標識したこれらの分子について受粉時の局在変化をライブセルイメージングによりon timeで観察した。以上の結果について、報告する。