日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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外的ストレス応答解析から見えてくる植物ホルモンシグナルのネットワーク
*仲下 英雄
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p. S0047

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抄録
病害ストレスにより誘導される免疫機構である全身獲得抵抗性に働くサリチル酸シグナルと、環境ストレス応答に働くアブシジン酸シグナルとの間には、相互抑制的なクロストークが存在する。虫害などの傷害ストレスにより誘導されるジャスモン酸シグナルも、サリチル酸、アブシジン酸の両者と相互拮抗関係にある。移動できない植物では、外界からの生物・非生物ストレスに対する応答が三つ巴の関係で調節し合い、その時々で緊急性の高いストレスに効果的に対応して自己を守るシステムがあると考えられる。
ホルモンの作用を支点とした個別のシグナル研究から複雑なクロストークが見出されてきたが、その一方で、クロストークでの抑制機構の解明は今後の課題である。植物ホルモンは、植物の生育時に目で見えるような現象を起こすためのシグナル物質と捉えられてきたが、抑制的な効果も重要な作用であると考えてもよい。例えば、低温ストレス応答ではアブシジン酸はあまり重要な意義はないにもかかわらず蓄積するのは、他のシグナルを抑制するためと考えることもできる。ここにおいては、すべての植物ホルモンに当てはまるわけではないが、動物のホルモンでの定義と異なり植物では「標的器官」が曖昧であることも大きな意味を持っているかもしれない。本発表では、ストレス応答を例として、植物ホルモンシグナルネットワークの意義の可能性について議論したい。
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© 2009 日本植物生理学会
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