抄録
近年,小児開心術後の縦隔洞炎に対する持続陰圧吸引療法(Negative Pressure Wound Therapy:NPWT)が一般化しつつあるが,組織の脆弱性を伴う症例についてはその適用は難しく,従来型の洗浄処置を選択せざるを得ない.われわれは,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染による高度の組織破壊を来した開心術後縦隔洞炎で,生理食塩水洗浄とカルボキシメチルセルロース銀(アクアセル®Ag)充填による処置の継続が奏効し,閉創に至った乳児の1 症例を経験した.本法は,アクアセル®Ag の高い吸水性とAg イオン放出による抗菌効果から,創内の持続的なドレナージと創感染のコントロールが期待でき,組織の脆弱性などでNPWT が適用できない症例に対する保存的治療法の一つになりうるものと考えられた.