抄録
イネ登熟期のアミロペクチン生合成に関与する主要なスターチシンターゼ(SS)はI型(SSI)とIIIa型(SSIIIa)であり,各シングル変異体の分析からそれぞれのアイソザイムの機能が推定された (Fujita et al., (2006), Plant Physiol. 140: 1070-1084; Fujita et al., (2007), Plant Physiol. 144: 2009-2023)。本研究では,両変異体の交配後代から得られたイネ変異体の胚乳澱粉の性質および他の澱粉生合成関連酵素への影響を調べた。SSI変異体とSSIIIa変異体の交配後代のF2種子から,両親には見られない白濁種子が得られ,これらの遺伝子型には、ss1ss1/SS3ass3aとSS1ss1/ss3ass3aの2タイプが存在した。また,登熟胚乳のSS活性は,いずれのタイプも顕著に低下していることが明らかになった。一方、SSIおよびSSIIIaの両方の活性が完全欠失した登熟種子は得られず,不稔になると考えられた。両タイプの白濁種子のアミロペクチンの鎖長分布は,野生型や両親変異体とも異なるユニークなパターンを示し,アミロース含量が高かった。また、アミロース合成に関与するGBSSIタンパク質量およびSSの基質を供給するAGPaseの活性も野生型や両親変異体よりも増加していた。