抄録
ラン藻などのバクテリアのゲノムには自然突然変異がおきやすいことは経験的に広く知られている。実際、ゲノム解読に用いられた菌株と研究室レベルで保持されている菌株では、塩基配列に複数個所の違いがある例、またそれらが表現型にも影響を与えている例が報告されている。このような問題を完全に解決するには研究室で保有する菌株ゲノムの再解析が必要である。本研究においては次世代シーケンサーを用いてラン藻Synechococcus elongatus PCC 7942 株(東京農大保有株)のリシーケンスをおこない、2005年に報告されているPCC 7942ゲノムとの配列比較をおこなった。解読したリード配列をPCC 7942ゲノム配列上にマッピングし、ゲノムワイドな1塩基多型、欠失領域の検出を試みた。その結果、東京農大で保有する株においては7つの1塩基多型、及び連続した48.7 kbにおよぶ領域の欠失が起きていることが明らかになった。この結果から、バクテリアのポストゲノム解析をおこなう上でのリシーケンスの重要性が明らかになった。またde novo アセンブルによるゲノムの再構築についても考察する。
本研究は文部科学省「戦略的研究基盤形成支援事業」の一環として実施したものである。