抄録
タバコのbZIP型転写活性化因子RSGはジベレリン(GA)の内生量調節に関与する。RSGの機能はGA内生量に応じた細胞内局在調節によって制御されており、その制御にはSer-114のリン酸化が重要である。NtCDPK1はRSGのSer-114をリン酸化する酵素として単離され、RNAiを用いたノックダウン解析からNtCDPK1はRSGを特異的にリン酸化することが示された。本研究では、NtCDPK1の基質認識機構の解明を目的とした。欠失変異およびアミノ酸置換変異タンパク質を用いたpull-down解析からNtCDPK1のN末端非保存領域がRSGとの結合に必要であること、またその結合にはN末端非保存領域のArg-10が特に重要であることが示された。Arg-10をアラニンに置換したNtCDPK1はRSGのリン酸化能を著しく減少させたが、リン酸化能自体は維持していた。また、シロイヌナズナのCDPKの一つ、AtCPK9の非保存領域をNtCDPK1のものと置換したキメラCDPKはRSGのリン酸化能を獲得した。キメラCDPKを過剰発現するタバコはNtCDPK1を過剰発現するタバコと同様に機能した。これらの結果から、非保存領域を改変することで、CDPKの基質特異性を操作し、細胞内のカルシウムのシグナル伝達経路を再構築することができる可能性が示唆された。