日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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ポプラの導管液成分と根における遺伝子発現の季節変動と低温・アブシジン酸の関与
*阿部 雄太水野 宏亮古川 純小嶋 美紀子榊原 均森 仁志岩井 宏暁佐藤 忍
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p. 0027

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抄録
ポプラは春に開芽、展葉し秋に休眠、落葉する年周期性を示す。しかし、根の成長や機能の年周期性についてはあまり知られていない。そこで我々は、1年を通した根の機能の変動を明らかにするため、導管液を2年間に渡って採取し、根で吸収・生産された成分の変動と、根で発現する遺伝子の発現変動を調査した。導管液成分は多くのものが年周変動を示し、無機元素や植物ホルモン、アミノ酸は2月~3月の導管液中に豊富に存在していた。一方多種類のタンパク質はほかの成分に先がけて12月~3月の導管液に豊富に存在していた。このように導管液成分の存在ピークは成分により異なっていた。根における遺伝子発現は、細胞膜アクアポリン(PIP)が導管液量の増加する4月頃から、サイクリン(CYCB)は根の成長が活発になる6月頃から強く発現していた。さらに、導管液中に最も豊富に存在していた25 kDaのタンパク質 (XSP25)をMS解析によって同定し、その遺伝子発現と、ABA合成酵素(NCED) の発現パターンを調査した。その結果XSP25は冬期の根において合成され、ABA投与により発現が誘導されることが分かった。また低温処理により地上部のみでNCEDの発現が増加していた。このことから冬期の低温により地上部で合成されたABAが篩管を介して根へ移動し、XSP25の合成を促進している可能性が考えられた。
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© 2010 日本植物生理学会
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