抄録
ヘテロ三量体Gタンパク質を介した細胞内シグナル伝達は真核生物に広く保存されており、植物においてはオーキシンやアブシジン酸、糖などへの応答においてヘテロ三量体Gタンパク質の重要性が示唆されている。共役する受容体にリガンドが結合するとヘテロ三量体Gタンパク質のサブユニットが乖離し、各サブユニットが二次メッセンジャーの産生に関わる酵素など他のタンパク質の活性を調節することで下流の経路へとシグナルが伝えられると考えられているが、このような調節を受けるタンパク質に関する知見は植物においては乏しかった。本研究では、酵母ツーハイブリッド法によりシロイヌナズナの三量体Gタンパク質βサブユニット(AGB1)の相互作用因子を探索し、bZIP型転写因子であるVIP1を新たな相互作用因子として同定した。植物体内におけるAGB1とVIP1との相互作用をBiFC法により調べたところ、核において蛍光の回復が見られたことから、これらは核において相互作用すると考えられた。植物体内におけるVIP1の機能について更に詳しく調べるためCaMV35Sプロモーターを用いてシロイヌナズナにVIP1を構成的に発現させたところ、塩、アブシジン酸、グルコースの存在下で種子の発芽が著しく阻害された。AGB1はアブシジン酸シグナリングを負に制御することが知られていたが、上の結果より、この経路にVIP1が介在する可能性が示唆された。