抄録
コメへのCdの蓄積を抑制するためには、それに関与する分子機構を明らかにする必要がある。本研究で我々は、イネのCd集積に関与するQTL遺伝子を単離し、その機能解析を行った。
これまでにCd高集積系統(Anjana Dhan)と低集積系統(日本晴)を交配して得たF2集団を用いて地上部のCd集積に関与するQTL解析を行ったところ、第7染色体に効果の大きい新規QTLが検出された。1774個体のF2を用いて、ファインマッピングを行った結果、候補遺伝子としてP-type ATPaseをコードする遺伝子CASTLE1の単離に成功した。この遺伝子は両系統ともに主に根で同程度に発現していた。日本晴においてRNAiにより遺伝子発現を抑制した場合には地上部のCd濃度が増加し、過剰発現させた場合は逆に濃度が減少した。興味深いことに、いずれの場合も他の重金属の濃度の変化が見られなかった。抗体染色によりタンパクの局在を調べたところ、根の全ての細胞でシグナルが検出され、液胞膜への局在が認められた。酵母を用いたアッセイの結果、日本晴型CASTLE1はCdの輸送活性を示したのに対し、Anjana Dhan型は活性を示さなかった。これらの結果は、この輸送体は根で液胞内へ特異的にCdを隔離することによって、地上部へのCdの輸送を制限しており、その機能の欠損がAnjana DhanのCd高集積に寄与すると考えられる