日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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Solanum torvum由来NRAMP1を過剰発現するタバコは地上部のカドミウム蓄積量が減少し,鉄含量が増加する
*瀬野浦 武志石丸 泰寛高橋 竜一Shimo HugoZhang Min福岡 浩之荒尾 知人石川 覚中西 啓仁西澤 直子
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p. 0048

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抄録
カドミウム(Cd)は有害重金属であり,環境汚染や作物汚染が問題になっている。我々は,低Cd蓄積性のナス科植物であるトルバム(Solanum torvum)から,シロイヌナズナNRAMP1と高い相同性を示す遺伝子StNRAMP1を単離した。StNRAMP1遺伝子の発現は鉄欠乏で強く誘導され,Cd添加で抑制された。StNRAMP1を導入した酵母はCdに対する感受性が増大した。また,GFP融合タンパク質をタマネギ表皮細胞で発現させると,緑色蛍光は主に細胞膜に観察された。これらの結果から,StNRAMP1は細胞膜に存在しCdを輸送し得るinflux型の鉄トランスポーターであると推察された。さらに,35Sプロモーター制御下でStNRAMP1遺伝子を発現する形質転換タバコを作製した。形質転換体は通常の栽培条件下で顕著な葉脈間クロロシスを呈し,症状は下位葉でより激しく表れた。また,Cdを含む寒天培地では生育が強く抑制された。水耕栽培による5日間のCd処理(0.1 μM)の結果,形質転換体の最新葉に含まれるCdは非形質転換体の約1/5であった。葉脈間クロロシスを呈した第二新葉でも同様にCd蓄積量が減少していたが,鉄含量が約2倍に増加していた。これらの結果から,StNRAMP1の過剰発現はタバコ体内の鉄の分配を変化させ,その結果,Cdの地上部への移行あるいは蓄積が抑制されたと考えられた。
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© 2010 日本植物生理学会
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