抄録
シロイヌナズナのddm1(decrease in DNA methylation 1)変異体では、ゲノム全体でDNAメチル化が低下し、自殖後代で様々な発達異常が観察される。ddm1の自殖後代から得られたbonsai(bns)は、開花遅延や矮化、頂芽優勢の低下などの表現型を示す。この表現型の原因遺伝子、BNSは、細胞周期の制御に関わるAPC13(Anaphase Promoting Complex 13)に類似のタンパク質をコードしており、bns変異体ではDNAが高度にメチル化され、転写が不活性化されていることが示された (Saze and Kakutani 2007)。
ゲノム全体でのDNAメチル化の減少を背景に、BNS遺伝子座において局所的なDNAメチル化上昇が起こる機構を調べるために、エピジェネティックな制御に関わる因子とddm1との二重変異体を作成し、BNS遺伝子座のメチル化誘導に必要な因子を探索した。その結果、BNS遺伝子座のDNAメチル化は、植物のde novoメチル化機構として知られるRdDM(RNA-directed DNA methylation)機構ではなく、ヒストンH3K9メチル化酵素のKYPと、植物に特異的なDNAメチル化酵素で非CpG配列のDNAメチル化維持に関わるCMT3を介した機構によって誘導されていることが示唆された。