日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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ABAシグナル伝達に関与する細胞膜蛋白質ITN1と転写因子様蛋白質RTV1の相互作用
*坂本 光坂田 桂子射場 厚
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p. 0075

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抄録
細胞膜局在型アンキリンリピート蛋白質ITN1を欠損したシロイヌナズナ変異体では耐塩性が向上し、アブシジン酸(ABA)応答性が低下している。それゆえ、ITN1は植物のABAシグナル伝達に関与すると考えられる。ITN1と相互作用する蛋白質を探索した結果、転写調節因子VRN1と相同性の高いRTV1が候補として同定された。植物表皮細胞での一過的発現系を用いた局在解析からRTV1の核局在性が確認されたが、ITN1と共発現させた場合その局在は細胞膜でも認められた。さらにBiFC実験から、RTV1がITN1と細胞膜上で相互作用することが確かめられた。RTV1がABAシグナル伝達に関与する可能性を検討するために、RTV1を欠損したシロイヌナズナ変異体において様々なストレス関連遺伝子のABA応答性を調べた。この変異体では病害応答性遺伝子PR1のABAによる発現誘導が野生株より早く起こることがわかった。この結果は、ABA応答初期においてRTV1がPR1の発現を抑制することを示唆する。対照的に、itn1変異体ではPR1の発現のABA誘導性が野生株より顕著に低下していた。PR1は病害応答において特徴的に発現する遺伝子であり、その発現はABAや他の植物ホルモンを介したシグナルにより協調/拮抗的に制御される。ABAシグナルを介したPR1の発現制御におけるITN1とRTV1の相互作用の役割を考察する。
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© 2010 日本植物生理学会
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