日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

地衣体に蓄積されたアラビトールが乾燥時における共生緑藻の光阻害防御機構を促進する
*小杉 真貴子菓子野 康浩佐藤 和彦三宅 博久小村 理行柴田 穣伊藤 繁
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0083

詳細
抄録
地衣の共生光合成生物が真菌との共生によって得ている利益を乾燥耐性の面から明らかにし、地衣の優れた乾燥耐性機構について解明するため緑藻共生地衣、Ramalina yasudaeとその共生藻であるTrebouxiaの乾燥応答について比較したところ、以下のような違いが見られた。(1)R. yasudaeでは乾燥時に光化学系II(PSII)反応中心が完全に停止しているのに対し、Trebouxiaでは活性が一部残存する。(2)乾燥によって誘導されるPSIIにおける蛍光消光が、TrebouxiaではR. yasudaeに比べ小さい。(3)Trebouxiaは地衣に比べ乾燥時の光感受性が高く、光阻害を受けやすい。これらの違いはTrebouxiaの乾燥時における過剰光エネルギーの熱散逸機構が地衣体内で強化されていることを示している。そこで、地衣成分中に乾燥時の蛍光消光を促進する物質があるかを調べたところ、地衣の水溶性成分中に多量に含まれるアラビトールにその効果があることが分かった。アラビトール添加による乾燥時の蛍光減衰速度の増加は、ストリークカメラを用いたピコ秒時間分解蛍光スペクトル解析によって確かめられた。これらのことから、地衣体内に蓄積されたアラビトールがTrebouxiaの乾燥耐性に大きな役割を果たしていることが示唆された。
著者関連情報
© 2010 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top