抄録
イネのMNU変異原処理後代から半優性を示す半矮性変異体を4系統選抜し、解析したところ、すべての変異体においてジベレリン(GA) 信号伝達の抑制因子であるDELLAタンパク質をコードするSLR1に変異が入っていた。今回はこれら変異体 (Slr1-dと命名) が矮性の表現型を示す分子機構について解析した。
選抜した4つのSlr1-d変異体の内、3つはN末側のDELLA/TVHYNP domainをコードする領域に、残り1つはSLR1のC末端に存在するGRAS domainをコードする領域に、それぞれ1塩基置換が起きていた。これら変異体は野生型に比べGAによる草丈の伸長が抑制されると共に、SLR1-dタンパク質の分解がSLR1に比べ遅滞した。また、SLR1の分解にはGA受容体GID1とSLR1の結合が必須であるためGID1とSlr1-dの相互作用についてYeast two hybrid法により解析した。その結果、Slr1-dとGID1の相互作用はSLR1とGID1の相互作用よりも低下していた。これらの結果から、Slr1-d変異体はSLR1とGID1の相互作用が低下し、GA信号伝達因子であるSLR1の分解が遅延するため矮性の表現型を示すと考えられた。
本研究は、文科省「ターゲットタンパク研究プログラム」および科研費(18107001)の助成を受けたものである。