日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

低温共焦点レーザー顕微スペクトル蛍光法による光合成色素-タンパク質複合体の構築過程の検討
*田原 由香里奥井 伸輔加藤 渉柴田 穣伊藤 繁
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0105

詳細
抄録
暗所で生育した被子植物では、プロトクロロフィリド(PChlide)からクロロフィル(Chl)への変換が起こらず黄化する。黄化葉細胞内に存在する葉緑体前駆体エチオプラスト内では、PChlideはプロチラコイド(PT)とプロラメラボディー(PLB)に局在し、それぞれ633、657 nmに主な蛍光極大を示す。黄化葉に光照射すると速やかにPChlideからChlの変換が起こり、光化学系の構築が開始される。本研究では低温90 Kで緑化過程を止めた黄化葉の顕微分光測定を行い、黄化時と緑化過程での光合成色素-タンパク質複合体およびその中間体の分布を直接観測し、光化学系の構築過程を検討した。低温スペクトル測定法により細胞内に点在するPChlideと、異なった複合体上のChlの蛍光を正確に定量可能にした。
C4植物であるZea maysを用いた。C4植物は維管束鞘細胞と葉肉細胞で光化学系IとIIの分布が異なり、細胞内での光合成光化学系の分化が緑化過程のどの段階で進行するかは興味深い。黄化葉の維管束周りの細胞では、PLB由来の蛍光とPT由来の蛍光強度比が周辺細胞とは異なっていた。光照射3時間後には680 nm付近と720 nm付近の2つの蛍光バンドが見られた。特に維管束周りで系I由来の720 nmの蛍光強度が強く、既に細胞ごとの光化学系分化が起こっていることが示された。
著者関連情報
© 2010 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top