日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナの種子形成におけるクロロフィルb還元酵素の機能解析
*中島 沙織伊藤 寿田中 亮一田中 歩
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p. 0111

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抄録
植物は2種類のクロロフィル(クロロフィルaとクロロフィルb)を合成する。これらのクロロフィルは、葉緑体内の酵素によって相互転換しうることが明らかになっている。クロロフィルbからクロロフィルaへの転換反応は、2種類の酵素によって触媒される2段階の反応であるが、この一段階目を触媒する酵素をクロロフィルb還元酵素とよぶ。この酵素は、緑葉におけるクロロフィルbの分解に必須であることがわかっている。この酵素の遺伝子は、種子の登熟期にも発現する事が知られているが、この酵素の種子の登熟期における機能はわかっていない。そこで本研究では種子形成に着目して、クロロフィルb還元酵素欠損株の種子の色素測定を行ったところ、登熟後の種子でもクロロフィルの蓄積が見られた。またwestern blottingによりクロロフィルb結合タンパク質(LHCII)の存在が確認された。電子顕微鏡観察では野性株とは大きさの違う脂肪体が見られ、細胞の内部構造が異なることが明らかとなった。さらに、クロロフィルb分解酵素欠損株の種子は劣化しやすく、保存期間の長さに応じて発芽率の低下が観察された。このようにクロロフィルb還元酵素は種子形成と発芽を正常に進行するために必須であることが明らかになった。
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© 2010 日本植物生理学会
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