抄録
海洋性珪藻は現大気圧CO2濃度環境下において、細胞内に無機炭素 (Ci) を濃縮する機構(CCM)を持つ。濃縮されたCiは細胞内カーボニックアンヒドラーゼ (CA)によって効率よくRubiscoに送り届けられると考えられている。海洋性珪藻Phaeodactylum tricornutum では2つの葉緑体型CA、PtCA1及び2が同定されともにピレノイドに局在することが強く示唆されている。しかしP. tricornutum ゲノムにはこの他に6つのCA候補遺伝子があるが局在は明らかではない。一方で海洋性珪藻のCCMにはC4型光合成経路が含まれるという説もある。単細胞の海洋性珪藻がC4型光合成を行うならばHCO3-固定酵素PEPCは細胞質に、脱炭酸酵素のPEPCK、MEは葉緑体に局在するはずだが、その証拠はまだ得られていない。本研究ではP. tricornutumのCAとC4型光合成関連酵素の局在を調べた。これらの遺伝子をゲノムデータベースから探索し、クローニングした。RT-PCRによってCO2と光に対する応答性を調べた。また、これらの遺伝子とegfpを融合し局在を解析した結果6つのCA候補タンパク質は4重膜包膜系に集中して局在した。これらの酵素の局在から海洋性珪藻の炭素獲得機構について議論する。