日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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イネの新規ケイ酸輸送体Lsi3の解析
*山地 直樹三谷 奈見季馬 建鋒
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p. 0156

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抄録
ケイ素の集積植物であるイネは、根から吸収したケイ素を地上部の各組織に沈積することによって、様々なストレスの軽減など有益な効果を得ている。我々はこれまで、イネのケイ酸吸収と分配に関わる3種類の輸送体Lsi1, Lsi2とLsi6を単離解析してきた。今回は新規輸送体Lsi3について機能解析を行った。
Lsi3はLsi2とアミノ酸配列で81%の相同性があり、アフリカツメガエル卵母細胞発現系ではLsi2と同様にケイ酸を排出する輸送活性がみられた。また、GFP融合タンパク質の一過性発現では、細胞膜への局在が観察された。Lsi3の発現は主に根と上位の節において検出され、節の発現は開花期にかけて一過的に増大した。免疫組織染色の結果、Lsi3は根では内鞘、節では肥大維管束と分散維管束の間の柔組織に局在していたが、Lsi2のような極性局在はみられなかった。Lsi3の発現が数倍に増大したenhance lineでは短期間のケイ酸吸収と導管液中のケイ酸濃度の増加がみられ、根の内鞘においてLsi3は導管へのケイ酸のローディングを担っていると考えられた。節では肥大維管束周縁部の木部転送細胞に発現するLsi6によって、葉へと向かう蒸散流からケイ酸がアンローディングされる。Lsi3の局在はこのケイ酸を上位の節や穂へと続く分散維管束へと再ローディングする過程に関与していることを示唆している。
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© 2010 日本植物生理学会
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