抄録
高親和型硫酸イオントランスポーターSULTR1;2は、シロイヌナズナの根における外界からの硫酸イオン吸収に主要な役割を果たす。SULTR1;2の遺伝子発現は環境中の硫酸イオン濃度の減少に応答して増加し、このことは硫黄欠乏下(-S)で植物が硫酸イオンの吸収を増すための適応機構であると考えられている。これまでに、SULTR1;2の-S応答がSLIM1転写因子により制御される事、SULTR1;2の-S応答シス因子がWRKY結合配列を含むことを見出した。SLIM1とSULTR1;2は組織局在性が異なるため、SULTR1;2の発現をSLIM1が直接的に制御しているとは考えにくい。そこで本研究では、SULTR1;2の-S応答を直接的に制御するWRKY転写因子の同定を試みた。シロイヌナズナのゲノム上に存在する72種のWRKY転写因子のうち、-Sで発現が上昇し、かつその発現上昇がslim1変異体で抑制されるものを探索したところ、3種が認められた。これらについて遺伝子欠損変異体を取得し、硫黄十分、-SにおけるSULTR1;2および硫酸イオンの吸収活性を調べたところ、どちらも-Sでのみ野生株と比較して有意に減少していた。この結果は、WRKY転写因子が硫黄欠乏に応じた硫酸イオン吸収活性の上昇に寄与していることを示している。現在、過剰発現体についても同様の解析を進めている。